インド主要7都市における地下鉄駅へのアクセス向上プロジェクト
STAMP(The Station Access and Mobility Program)
渋滞解消のために地下鉄の利用促進が急務
インドの中核都市では、急速な経済成長に伴って自動車交通量が急増し、慢性的な交通渋滞が大きな社会課題のひとつとなっています。その対策の一つとして、地方政府による地下鉄網の整備が進められており、その利用者数を増やすことが交通渋滞解消へ向けて急務となっています。
トヨタ・モビリティ基金(TMF)は、地球環境や都市交通の整備に取り組む非営利団体ワールド・リソース・インスティチュート(WRI)と共同で、インドの7都市(ベンガルール、ハイデラバード、コチ、ムンバイ、プネ、ナグプール、デリー)において地下鉄へのアクセス向上を目指すプロジェクト「STAMP(The Station Access and Mobility Program)」を実施しています。同プロジェクトでは、各都市の地下鉄網の成熟度の違いに応じた状況を幅広く把握するため、2016年12月からのベンガルールでの実証実験を皮切りに、2021年までにハイデラバード、コチ、ムンバイ、プネ、2022年にはナグプールに続き、9月には、本プロジェクトの最終都市となる首都デリーで実証実験をスタートしました。
アイデアコンテストで改善案を募集
STAMPは、地下鉄利用者の拡大を目指し、自宅から駅までの「ファーストマイル」と駅から目的地までの「ラストマイル」のアクセス改善に取り組むプロジェクトです
本プロジェクトでは、まず地下鉄の利便性に関する調査を実施し、地下鉄へのアクセスにおける現状の課題と原因を探ります。次に、調査結果や他地域での事例などを共有するワークショップを開催。IT技術者などを対象に、調査で特定した課題を解決するアイデアを募るコンテストを実施しました。コンテストで選出された有望なソリューションに対しては専門家からのアドバイスをもとに精度を高め、実際に試験サービスとして提供し、その効果を検証しました。
ベンガルール、ハイデラバード、コチでは二輪車レンタルや駐車場管理、チケット分析などのサービスがコンテストで選出され、実証実験が実施されました。続くムンバイでは、自転車シェアリングや生体認証による発券を地下鉄駅で試験導入しました。さらにプネ、ナグプールでも同様のプロジェクトを実施。2022年9月からは、6都市で実施したプロジェクトの学びを活用し、首都デリーの4つのエリアでプロジェクトを開始しています。
Metric(指標) | Bengaluru(ベンガルール) | Hyderabad(ハイデラバード) |
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Rides served(乗車回数) | 17,564 | 10,310 |
Passenger-time saved(ユーザーの時間短縮/分) | 226,007 minutes | 72,788 minutes |
Modal-shift induced(モーダルシフト) | 35% modal shift from private modes (35%が自家用車から変更) | 11% modal shift from private modes (11%が自家用車から変更) |
インドの交通課題解決に向けて
本プロジェクトでは、インドの主要7都市における調査や実証実験を通じ、持続可能なビジネスモデルや市民にとって使いやすいサービスのあり方を検証しました。2023年のデリーにおける実証実験終了後に、本プロジェクトで得た知見を集約し、インド政府やステークホルダーに対、交通課題解決に向けた提言をまとめる予定です。
https://wricitiesindia.org/STAMP/