タイ・バンコク渋滞緩和プロジェクト
バンコクで官民学一体の取り組みを実施
トヨタ・モビリティ基金（TMF）は、2015年より、タイのバンコクにおける渋滞緩和プロジェクトを助成しています。プロジェクトは2つのフェーズに分かれており、第１フェーズではサトーン通りで深刻化する渋滞の緩和に向け、「多様な移動手段の活用促進」「交通流の円滑化」の2つのアプローチで取り組みを実施し、渋滞長の減少や交通流の改善といった成果を上げました。
経済成長が著しいバンコクでは、都市部への人口増・モータリゼーションなどにより、激しい渋滞が社会課題となっています。中でも学校や企業、商業施設が数多く存在する地区の大通りには交通が集中。6-8時、17-19時の通勤・通学時間帯には特に激しい渋滞が発生し、深刻化していました。
交通渋滞は、目的地への移動時間が読めず、移動に多くの時間が必要となることから、市民の生活に大きな影響を及ぼします。さらに緊急車両の到着が遅れる、CO2の排出量が増えるなど、社会全体に対しても大きな損失となります。
2つのアプローチで渋滞緩和策を実施
本プロジェクトでは、バンコク都庁、タイ運輸省、タイ警察、チュラロンコン大学、そしてTMFの官民学が活動主体となり取り組みを進めました。渋滞が激しいサトーン地区をモデルとして、2つのアプローチで取り組みを進めました。
1つ目の「多様な移動手段の活用促進」では、駅周辺に駐車場を確保して都心への移動時に自家用車から公共交通への乗り換えを促進するパーク&ライドの実施、地区内の学校への送迎シャトルバスの運行、「交通手段ナビゲーションアプリ」を活用した幅広い交通手段の利用促進などの取り組みを実施。1日あたりの利用者はパーク&ライドが528人、送迎シャトルバスが95人に上りました。またアプリは2549人にダウンロードされました。
2つ目の「交通流の円滑化」では、駐停車・車線変更禁止やバスレーンの設置など、現地調査を踏まえた交通のボトルネック対策を実施。同時にカメラやセンサーなどのツールを活用した信号サイクルの最適化を実施しました。事前にコンピューター・シミュレーションにより交通流改善策の効果を予測し、対策実施後はカメラやセンサーによって収集したデータを元に効果を可視化。予測と実績を比較してシミュレーションの精度を向上するというPDCAサイクルを回し、交通流を継続的に改善しました。
渋滞緩和に着実な効果、課題も確認
2つのアプローチを実施した結果、サトーン通りでは中心交差点からの渋滞長が約1km減少。中心交差点での交通流（単位時間当たりの通過車両数）は12.6%改善し、渋滞が最も激しい交差点間の所要時間は最大で68%改善するなどの成果を上げました。同時にバンコク全体で実施するには、コスト面などでの課題があることも顕在化しました。
第1フェーズでは、交通需要の調整や流量を改善するための、パーク＆ライドやシャトルバスの運行、交通信号制御の最適化等の交通マネジメント手法を試行し、その成果や学びをまとめ、渋滞緩和に向けた提言書（ロードマップ）としてタイ政府に提出、渋滞緩和に向けて着実な成果を収めるとともに、今後取り組みを発展させていく上での課題も確認することができました。
第２フェーズでは、さらなる成果を追求
第１フェーズの成果を受け、2019年より「移動データの取得とAIを活用した施策」をテーマとして、ラマ4世通りの渋滞解消を目指す第２フェーズが進行しています。
第2フェーズでは、従来型の交通マネジメント手法に加え、ビッグデータやAIを活用することで、渋滞の根源となっている箇所の原因をデータ分析し、渋滞緩和に向けたより効率的な仕組みの実現を目指しています。具体的には、バンコク都庁・タイ警察とも連携し、ラマ４世通りに複数のカメラやセンサーを設置。交通流などのデータ取得や、タクシー、公共バス等から提供される車両のGPSデータなど、多様なデータをチュラロンコン大学、人工知能による交通分析・予測サービスを提供する専門家等と共に分析。交通状況を視覚化し、渋滞等の問題発生の傾向とパターンを把握します。その分析結果を、交通管理システム、交通網計画や都市計画にも反映していく予定です。
WBCSD SMP2.0 Sathorn Model Project - Final Report
※チュラロンコン大学が作成したサトーン通りで行った第１フェーズの報告書。（英文のみ）
